2009年02月18日

REPORT 33 タナトス

 野島伸司さんのドラマ『ラブ・シャッフル』で、僕は初めてタナトスという言葉を知りました。
 タナトスとはフロイトの用語で、自己破壊に向かう死の本能をさすそうです。つまり、死への渇望。この対義語がみなさんもよくご存じだと思います、エロスです。
 このドラマにはこのタナトスにとりつかれた美大生が出ています。彼女の描く絵を見て、カメラマンとして活躍しているオージローはこう言うのです。
「タナトス。それを制圧する者が真のアーティストだ。死を乗り越えて怪物になる」
 こんな絵を見せられては自分はもうまともな写真が撮れない、と彼は苦悩します。
 このシーンが実にかっこいい!
 僕はビデオで何度も何度もこのシーンを見ました。鳥肌ものです。
 タナトス。これは武士道とは死ぬことと見つけたり、の『葉隠れ』とも通底する概念なのではないでしょうか。死を真剣に見つめた者だけが見える光が、世の中にはあるのではないでしょうか。暗闇の中だからこそ、光を強く感じられる。暗闇を知るからこそ、光の尊さがわかる。つまり、本当の生を知るためには、死を知らなければならない。
 これは自殺願望があるかどうか、という話とは少し違うような気がします。生きるために、生を燦然とさせるために、死を見つめ、死を考えるということです。そして、「死を制圧した者」はおそらくきっと、アーティストに限らず、本物なのではないかと思います。
 なんとなしに、そんなことを思ったのでした。
posted by 発起人 at 22:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記